カテゴリー: 飛行のしくみ
「Mayday fuel」とは? 予備燃料のしくみ
要点
旅客機は、使うことはないと見込む最終予備燃料を残して着陸するよう計画します。2026 年の報告の方式では 30 分、米国の国内線では通常巡航で 45 分です。「Minimum fuel(最低燃料)」は、これ以上の遅れを受け入れられないと管制に伝えるもので、緊急事態ではありません。「Mayday fuel」は緊急事態で、最寄りの適切な空港に着陸したときの残燃料がこの予備を下回る見込みになったら宣言します。
2026 年の報告が伝えること
英国航空事故調査局(AAIB)が 2026 年 9 月 24 日に公表した報告は、2025 年 10 月 3 日の嵐の中、イタリアからスコットランドへ向かった便を扱っています。燃料計画には地上走行と飛行の燃料、5% の予備、代替空港までの燃料、30 分の最終予備燃料が含まれ、機長はさらに約 1,300 kg、およそ 1 時間 12 分ぶんを積みました。その後の 3 回のウインドシア警報は、ウインドシアのページで説明しています。
2 回のウインドシア回避のあと、乗員は代替空港として選んでいた空港へのダイバートを求めました。要請は断られました。報告は、その空港自身の方針では受け入れるべきだったこと、断られたのは空港内部での連絡の行き違いによるとみられることを認定しています。乗員は第 2 の空港へ向かい、そこで 3 回目のウインドシア警報を受け、「mayday mayday mayday fuel」を宣言して、もともと希望していた代替空港へ飛びました。着陸時の残燃料は 363 kg、最終予備燃料は 1,101 kg でした。最初のゴーアラウンドから 1 時間 45 分後のことです。けが人はいませんでした。
報告によると、ゴーアラウンド推力では 2 基のエンジンで毎分約 120 kg を消費していました。また、燃料低下の警告が出たときには、第 2 の空港のほうが近かったため判断を見直す機会があったと指摘しています。その空港はその後、駐機場所があればダイバートを受け入れると改めて表明しました。私たちは調査結果を伝えるだけで、乗員を裁くことはしません。
予備燃料のしくみ
英国民間航空局(UK CAA)の安全通知は、三つの段階を示しています。第一に、機長は、計画した最終予備燃料を残したまま安全に着陸できる空港まで飛べる燃料があるかを確かめ続け、その余裕が危うくなったら管制に遅れの見込みを尋ねます。
第二の段階が「MINIMUM FUEL」です。便はもう一つの空港に向かうしかなく、許可が少しでも変わると最終予備燃料を下回って着陸するおそれがある状態です。通知は、これが緊急事態ではなく、管制は優先を与える義務がないとはっきり書いています。第三の段階が燃料の緊急事態です。最寄りの適切な空港に着陸したときの見込み燃料が最終予備燃料を下回るとき、機長は「MAYDAY MAYDAY MAYDAY FUEL」と宣言しなければなりません。
米国の規則も考え方は同じです。米国の国内線の便は、目的地まで飛び、さらに最も遠い代替空港まで飛び、そのうえ通常巡航で 45 分飛べる燃料を積まなければなりません。FAA のマニュアルは「minimum fuel」を緊急事態ではなく通報と位置づけ、優先が必要なら緊急事態を宣言し、残燃料を分で伝えるよう求めています。
待機やダイバートが普通である理由
予備燃料は、乗員が「危ない進入」と「燃料切れ」のどちらかを選ばなくて済むようにするためにあります。嵐の日の待機旋回やダイバートは、このしくみが働いている証拠です。乗員は計画した余分の燃料を使い、予備を守っているのです。機内で「Mayday」という言葉を耳にしたら、それは乗員が優先を求めているということで、管制は道を空けます。
AeroFox では
AeroFox は燃料計画を再現していません。ただ、無料の緊急レッスン「オートパイロットに任せる」では、自分で遭難通報をします。121.5 MHz で「Mayday」と言い、緊急コード 7700 を設定します。そのコードが出たとき管制に何が見えるかは、スコーク 7700 のページで説明しています。
よくある間違いと誤解
- 「Minimum fuel」は緊急事態ではなく、優先も得られません。優先が得られるのは「Mayday fuel」です。
- 最終予備燃料は計画に使える余りの燃料ではなく、着陸時にタンクに残っているはずの燃料です。
- 嵐の日のダイバートは何かがおかしいという意味ではなく、計画どおりに働いていることが多いのです。
- 報告は、飛行計画で代替空港に指定しても、その空港が受け入れてくれる保証にはならないと指摘しています。
よくある質問
旅客機はどれくらい予備燃料を積んでいますか?
2026 年の報告の方式では、予備燃料と代替空港までの燃料に加えて 30 分の最終予備燃料です。米国の国内線は、最も遠い代替空港に着いたあと、通常巡航で 45 分飛べなければなりません。
minimum fuel と Mayday fuel の違いは?
Minimum fuel は、選んだ空港へ向かう便がこれ以上遅れを受け入れられないという意味です。Mayday fuel は緊急事態の宣言で、最寄りの適切な空港での見込み燃料が最終予備燃料を下回る状態です。
報告の機体は燃料切れ寸前だったのですか?
着陸時の残燃料は 363 kg で、1,101 kg の最終予備燃料を大きく下回り、報告はもう一度ゴーアラウンドするには足りなかったとみられるとしています。機体は無事に着陸しました。
シミュレーターで練習する
「オートパイロットに任せる」で自分で遭難通報をしてみましょう。121.5 MHz に合わせ、Mayday と言い、緊急コード 7700 を設定します。レッスンでは、それぞれの手順が管制に何を伝えるのかを説明します。
関連する解説
出典
リンク先の出典は英語です。
- 調査報告:ウインドシア回避後に最終予備燃料を下回って着陸、2025 年 10 月 3 日(AAIB 公報 10/2026) (英国航空事故調査局(AAIB))
- 安全通知 SN-2019/002「最終予備燃料の保護と最低燃料の宣言」(2023 年) (英国民間航空局(UK CAA))
- 14 CFR 121.639 燃料の搭載:国内運航 (米連邦規則集(eCFR))
- 航空情報マニュアル 第 5 章第 5 節:最低燃料の通報 (FAA)
この解説について
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